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- 【1】 生計を一つにする家族がいるなら、 「扶養」について知って転職を
- 「扶養内で働く」とは?
- 「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」
- 【2】 税務・保険料が発生する年収額のまとめ
- ①住民税発生ライン:年収が100万円に近くなる場合はチェック!
- ②所得税発生&扶養者の所得税の負担増加ライン:年収103万円の壁
- ③条件により社会保険の負担が発生するライン:年収106万円
- 【3】 薬剤師は、どのくらい働くと、 どのラインを超えるのか
- 時給別でパート勤務をシミュレーション
- 【4】 年収ライン別 おすすめの勤務スタイル
- 年収93万円〜100万円の完全扶養内で働くなら:単発・短期派遣薬剤師の一択
- 年収103~130万円で、手取りを最大限にしたいなら:長期パート+iDecoなどの保険併用
- とにかく稼ぎたいなら、扶養を気にせず年収160万円以上を:正社員か長期派遣
- 【5】 扶養内・外を検討中の薬剤師が、ベストな転職先を探すには?
- 求人サイトの「扶養内勤務OK」検索は、完全扶養内を希望する場合のみに
- 扶養内・外、どちらの希望にも、転職エージェントの利用がおすすめ
- 【6】 まとめ
- データと評判でランキング! 【薬剤師転職サイト】69社超おすすめ大全
【1】
生計を一つにする家族がいるなら、
「扶養」について知って転職を
転職を考えている薬剤師の中には、ライフステージの変化などで、雇用形態など働き方から検討している方も多いでしょう。特に、生計を一つにする家族がいる場合は、扶養内で働くか、扶養外で働くか、という選択にも悩むのではないでしょうか。
家族の扶養に入ると、税や保険料の控除があり、世帯の手取り収入は高くなります。しかし、給与の高い職業である薬剤師は、パート勤務でも、扶養の範囲を超える収入となりやすく、その恩恵を逃してしまう可能性があります。
そこで今回は、「扶養内勤務」をテーマに、税務や保険料が発生する条件をまとめ、薬剤師の効率的な働き方を考えてみたいと思います。
※この記事は、2021年8月時点の情報をもとにした記事です。閲覧時点で情報が異なる場合があります。また、掲載されている法的な情報等について、正確性の確保に努めてはおりますが、その保証をするものではありません。予めご了承ください。
「扶養内で働く」とは?
そもそも扶養とは、生活の面倒をみるという意味。つまり「扶養される」というのは、親族から経済的な援助を受けながら生活することです。
(一般的に、扶養する側を「扶養者」、扶養される側を「被扶養者」と呼びます。)
日本の所得税や社会保険では、この「扶養」が考慮されており、被扶養者の有無や人数によって、課税所得が軽減される、被扶養者分の保険料が免除されるといった、扶養控除の仕組みがあります。
よく耳にする「扶養内で働く」「扶養内勤務」というのは、扶養控除を受けられる範囲内で、被扶養者が働くことを意味しています。
「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」
扶養内で働くことを検討する際、まず理解しておくべきは、扶養控除には、下記の2種類があるということ。
- 税制上の扶養控除(扶養者の税負担が軽減される)
- 社会保険上の扶養控除(被扶養者の社会保険が、扶養者の保険料で賄われる)
そして、上記2種はそれぞれ、被扶養者とみなされる親族の範囲や、控除の対象となる収入の基準など、条件が異なります。
扶養内で働きたい場合は、所得税と社会保険、どちらの扶養控除の条件も意識する必要があるのです。
これを踏まえ、次の項目からは、扶養内で働くために意識すべき年収のラインを具体的に説明していきます。
※本記事は、被扶養者の収入の基準に焦点を当てた内容になります。扶養対象の基準には、親族の範囲、年齢、同居の有無といった条件もあるので注意してください。詳細は、国税庁や全国健康保険協会のサイトに掲載されています。
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
全国健康保険協会「 被扶養者とは? 」
【2】
税務・保険料が発生する年収額のまとめ
被扶養者が働く場合、その収入が規定の範囲を超えれば、扶養控除が適用されないため、扶養内で働くよりも税金や保険料などの負担が大きくなります。
つまり、せっかく時間を割いて働いても、手取りの金額が、扶養内で働く収入よりも減ってしまう可能性があるのです。
パートでも給与が高い薬剤師という職業では、特に気を付けたいところなので、税務・保険料が発生する収入のラインを知り、今後の働き方を考えて転職に臨みましょう。
①住民税発生ライン:年収が100万円に近くなる場合はチェック!
金額の低いラインから順にみていきます。
まずは、年収100万円、住民税発生のラインです。
こちらは、扶養の仕組みによるものというより、収入がある人すべてに関わるものですが、年収100万円を超えるあたりから、課税対象になることを覚えておきましょう。
なお、正確には、「合計所得金額」が「基準額」を超えると、住民税が発生するということになります。
「合計所得金額」は、収入が給与のみの場合「給与−給与所得控除」となります。
給与所得控除は、所得税や住民税を計算する際に、年収から経費とみなして差し引かれる金額です。この給与所得控除の額は、決められた計算式で年収から算出されます。
(国税庁 No.1410 給与所得控除)
例えば、年収が100万円なら、給与所得控除は55万円のため、合計所得金額は45万円です。
そして、超えると住民税が発生する「基準額」は、都市部の場合は基本的に45万円なので、年収100万円までであれば、住民税は発生しないというわけです。
基準額は自治体ごとに異なるため、お住まいの地区役所のホームページなどで確認が必要ですが、基本的には、年収93万~100万円が、住民税発生ラインと考えてよいでしょう。
②所得税発生&扶養者の所得税の負担増加ライン:年収103万円の壁
次に意識したいのは、所得税が発生するライン。年収103万円です。
「年収103万円の壁」という呼び名を、よく耳にするのではないでしょうか。
被扶養者が働いていても、その年収が103万円以下であれば、本人の所得税が発生しないだけでなく、扶養控除または配偶者控除によって、扶養者の所得税の負担も軽減されます。
この103万円の考え方を解説しましょう。
所得税は、「課税所得金額」が1,000円以上の場合に発生します。
(国税庁 No.2260 所得税の税率)
「課税所得金額」は、前項で説明した「合計所得金額」から「所得控除」を引いた額です。
年収103万円の場合、給与所得控除は前項の例と同じ55万円なので、給与所得は48万円となります。
さらに、その給与所得48万円から、所得控除を差し引きます。
所得控除には様々な種類がありますが、誰にでも適用される「基礎控除」というものが存在します。(最低限の生活に必要な金額には税をかけないという考えから、無条件で全員に適用される所得控除です。)
基礎控除は年収・所得によって変動がありますが、基本的には48万円です。
給与所得48万円から、基礎控除48万円を差し引くと、課税所得金額は0円となります。
よって、年収が103万円までであれば、所得税は発生しないということになります。
また、この金額は、子どもや親などは扶養控除、配偶者は配偶者控除の対象となり、扶養者側の納税負担も軽減されるのです。
(国税庁 No.1180 扶養控除・国税庁 No.1191 配偶者控除)
ちなみに、所得控除には基礎控除以外にも様々な種類があるので、自分に適用できる控除があれば、所得税を発生させずに、年収103万円を少し超える年収を目指すことも可能です。
③条件により社会保険の負担が発生するライン:年収106万円
続いては、年収106万円。
こちらは、社会保険の負担が発生する可能性のあるラインです。
(国民健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険など。)
正確には、年収以外にも条件があり、以下5つの条件をすべて満たしている場合のみ、扶養者の社会保険から抜けて、被扶養者自身で加入する必要があります。
社会保険に加入となると、もちろん月々の保険料は被扶養者本人が出費することになります。
社会保険加対象者の条件
- ① 労働時間が週20時間以上である
- ② 月の収入が8.8万円以上である
- ③ 勤務期間が1年以上の見込みがある
- ④ 勤務先の従業員が501人以上である
- ⑤ 学生ではない
こちらの年収106万円という基準は、税金発生ラインよりシンプルで、単純に、②の「月収8.8万円以上」を年収換算したものです。
薬剤師であれば、この金額はすぐに超えてしまうので、社会保険の負担を回避したいなら、そのほかの条件「週の労働時間」「雇用期間」「勤務先の規模」のいずれかが、上記に該当しないよう計画することが近道でしょう。
*本記事は令和2年現在の情報に基づいた内容となっています。上記の条件④(勤務先の従業員)は、今後、令和4年10月、令和6年10月と、段階的に対象範囲が拡大される予定なので、注意が必要です。
(厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました)
【3】
薬剤師は、どのくらい働くと、
どのラインを超えるのか
ここまで、扶養内勤務を考える際に知っておきたい年収のボーダーラインを紹介しました。しかし、やや複雑で、どのくらい働くと、どのラインを超えて、どうなるのか…… 実際のイメージが湧きにくいかもしれません。
次は、具体的な設定で、勤務の時間やペースなどをシミュレーションしてみたいと思います。
時給別でパート勤務をシミュレーション
同じ勤務日数・時間で、3パターンの時給でシミュレーションしてみます。
【ケース1】時給1,500円×1日5時間×週3日勤務
- 月収9万円
- 年収約108万円
- 103万円ライン超え:住民税・所得税あり。扶養側の控除額が減額。
106万円ライン超え:しかし労働時間が週20時間未満のため、保険加入義務なし。
130万円ライン内:社会保険の負担なし。
社会保険の負担はありませんが、税金の負担が多少発生します。
そして、薬剤師としては比較的低めの時給であることを考えると、労働時間に対して収入が低い上に、納税で手取りも少なくなるという、あまり効率的ではない働き方と言えます。
勤務時間を減らして年収103万円未満に調整するか、より時給の高い職場で、扶養を気にせず働くほうがよいでしょう。
【ケース2】時給2,000円×1日5時間×週3日勤務
- 月収12万円
- 年収約144万円
- 103万円ライン超え:住民税・所得税あり。扶養側の控除額が減額。
130万円ライン超え:社会保険の保険料の負担あり。
税金の負担も、社会保険の負担も発生します。
保険料(年間20万円程度と仮定)を差し引くと、手取りは144万円―20万円1=24万円となります。
年収130万円になるように調整しておけば、勤務時間は減りながら、手取りは数万円大きかったことになります。
時給2,000円で働く場合は、130万円以内に収めるか、もう少し長く働いて160万円以上になるよう調整するほうがよさそうです。
【ケース3】時給2,500円×1日5時間×週3日勤務
- 月収15万円
- 年収180万円
- 103万円ライン超え:住民税・所得税あり。扶養側の控除額が減額。
130万円ライン超え:社会保険の保険料の負担あり。
この場合、税金を10万円程度と想定し、社会保険料を20万円程度と想定を概算で差し引いても、手取り金額としては150万円弱。週3日の短い時間の勤務でこれだけの収入が得られるのは、薬剤師ならではです。
*所得税=課税所得(年収―所得控除)×所得税率をかけたもの
*都民税=課税所得(年収―所得控除)×4%(課税標準額)
*市町村民税=課税所得×6%(課税標準額)
【4】
年収ライン別
おすすめの勤務スタイル
前項のシミュレーションからもわかる通り、薬剤師という職業は、給与水準が高いため、扶養控除の対象からすぐに外れてしまいます。扶養内で効率よく働きたい場合は、しっかり計画を立てなければ難しいでしょう。また、扶養の枠にとらわれずに働くという選択肢も有力なのは、給与水準が高い薬剤師だからこそと言えそうです。
以上を踏まえて、ここからは、目指す年収ライン別のおすすめの勤務スタイルを紹介します。
年収93万円〜100万円の完全扶養内で働くなら:単発・短期派遣薬剤師の一択
前述の通り、薬剤師は給与水準が高いため、パートでも簡単に扶養の範囲を超えてしまいます。
年収93万円〜100万円以内の完全な扶養内で働きたいなら、単発・短期派遣一択となるでしょう。
事前に職業・職場の実情を知るために、転職エージェントを利用して情報収集するのもおすすめです。
年収103~130万円で、手取りを最大限にしたいなら:長期パート+iDecoなどの保険併用
転職や扶養について検討している方のなかには、家事や子育て、介護などで忙しい方も多いでしょう。年収160万の勤務をする時間はないけれど、年収100万円以内ではちょっと…… という場合は、年収103~130万円の計画で働き、所得控除の対象となるiDeCoなどの保険を併用するのが得策です。
被扶養者として扶養者の社会保険に入れば、保険料の負担は無し。年収としては所得税が発生する額ですが、iDeCoなどの保険を併用して所得控除額を増やせば、ほぼ住民税のみの負担で済みます。
ただし、年収106万円のラインで紹介した、社会保険加入義務が発生する条件に該当しないよう注意が必要です。おそらく、労働時間を週20時間未満に抑えることで、対象外とするのが手早いでしょう。
そう考えると、フレキシブルに調整可能なパートが安心です。時給高めの職場で、短時間・少ない日数で、長期にわたって働くスタイルがおすすめです。
とにかく稼ぎたいなら、扶養を気にせず年収160万円以上を:正社員か長期派遣
できるだけ稼ぎたい、または働くこと自体が好きであれば、初めから扶養外のつもりで、正社員か長期の派遣を選ぶのがよいでしょう。年収160万円以上の年収を得る計画で働けば、働き損はありませんし、将来の年金額なども大きくなります。
長期で働くことになるので、パートよりも、福利厚生・ボーナス・有給休暇・時短制度、等が充実している正社員・派遣を選ぶことをおすすめします。
【5】
扶養内・外を検討中の薬剤師が、ベストな転職先を探すには?
では、いざ転職に向けて、どのように求人を探すのがよいのでしょう。
まず、必ず行うべきは、あらかじめ、扶養内・外、どちらで働くのか、また、時給や勤務日数・時間の希望などを決めておくことです。
内定後に調整しようとすると、せっかく見つかった勤務先とトラブルになったり、希望の働き方が叶わなかったり、最悪の場合は、採用が白紙になってしまう可能性もあります。
年収や税金のシミュレーションなどは少し大変ですが、転職後に後悔のないよう、具体的に希望条件をリストアップしておきましょう。
求人サイトの「扶養内勤務OK」検索は、完全扶養内を希望する場合のみに
求人サイトを使って職場を探す場合、完全扶養内勤務を希望する方は、「扶養内勤務OK」という条件で求人を検索できるサイトを利用するのがよいでしょう。
こちらはファルマスタッフの例です。求人検索の「その他の希望条件」の中に、「扶養内勤務OK」という項目が設けられています。
しかし、社会保険のみ扶養内を希望する方は、「扶養内勤務OK」の条件は外し、それ以外の希望条件で探すことをおすすめします。社会保険のみ扶養内で働く場合は、前述のように、高時給の職場で、短時間・少日数で働くスタイルが効率的です。
「扶養内勤務OK」の条件は、高時給の求人が除外されてしまう可能性が高いため、注意しましょう。
扶養内・外、どちらの希望にも、転職エージェントの利用がおすすめ
扶養内勤務、扶養外勤務、どちらを希望する方にもおすすめなのは、転職エージェントを利用することです。
扶養内で働きたい場合、収入の計算が重要になりますが、求人票の情報から自分で計算するのは、手間も不安もあります。また、不明点があっても、応募前に企業へ問い合わせるのも気が引けるものです。
しかし、エージェントに年収の上限と、扶養内で働きたい旨を伝えれば、その働き方が可能なお仕事を紹介してくれるうえ、不明点なども、企業に確認してくれます。
もちろん、扶養外勤務を考えている場合も同様です。希望条件を伝えて、求人を紹介してもらいましょう。多くの転職をサポートしてきているので、自分にはなかった視点で、新たな可能性がひらける求人を見つけてもらえる可能性もあります。
扶養内・外で迷っている方は、働き方からエージェントに相談してみてもよいかもしれません。
様々な転職エージェントが存在しますが、薬剤師に特化し、パート・派遣・正社員と、それぞれの雇用形態で多くの求人を扱っているエージェントを選ぶとよいでしょう。
例えば、薬剤師の転職サポートに特化したファルマスタッフは、単発の派遣求人を扱っていたり、扶養内パートの求人特集が組まれていたりと充実しています。
多くの求人を持っているエージェントの力を借りて、安心して働ける就職先を、効率よく見つけましょう。
【6】
まとめ
今回は薬剤師の扶養内勤務について、知っておくべき年収ラインや、それぞれに合わせた働き方を紹介しました。
知っているか、知らないか、という違いだけで、収入に大きな差が出てしまうこともある扶養の仕組み。
制度を正しく理解することは、効率よく収入を得てプライベートの時間を大切にすることや、表面的な知識に惑わされず自身のキャリアを守ることにもつながります。
今回の記事を参考に、家計や自分のライフスタイルに合った働き方を、ぜひ見つけてください。
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